コントレックスの永遠のテーマ
スマート・カードに金額を書き込むのは誰かという問題が、実用面でも法律的にも、まだ残っている。
シティバンクが委託した世論調査で、価値貯蔵カードを誰が発行すべきかと聞かれて、多くの回答者が「電話会社」と答えた。
電話会社や鉄道局、メッドクラブなどは明らかに、それぞれ独自のサービス提供の代金支払いに、価値貯蔵カードを使うことができる。
商店も、財政的にしっかりした事業体からなら、価値貯蔵カードを通じて支払いを受け取ることをむしろ喜ぶだろう。
ただし、その支払い代金を使える口座や、別の資産に移転するシステムがちゃんとあることが条件だがメリルリンチとバンク・ワンの経験から分かるように、銀行はこうした問題で協力するのには積極的なものだ。
一九九四年五月、EUのヨーロッパ支払いシステム・ワーキング・グループは、価値貯蔵カードの発行は銀行にだけ認めるべきだとの提案を行った。
ニューヨーク連銀のJ・ウエニンジャーとデービッド・ラスターは、「この提案は警告なのだ」として、「ノンバンク発行のカードは、伝統的に消費者を守ってきた銀行規制や監督、預金保険機構などの対象にならない。
こうした安全装置がないというのは大変なことだ。
なぜなら、一つの電子財布機構が破綻したら、ほかの電子財布システムに対する一般の信頼も崩れて、取り付け騒ぎが起きるかもしれないからだ」と書いている。
例えば電話会社の価値貯蔵カードを誰かがある店で使ったと、同店の口座の残高を増やすように銀行に命令する権限を商店主に与えてしまうプログラムを作ることなど、銀行が、歓迎しないかもしれない、ということは理解できる。
逆に、MやGEMなどの企業は銀行より信用度の評価が高いので、価値貯蔵カードのビジネスに乗り出しても、それをやめさせようとする力が市場に生じることはあるまい。
意地悪い人はこう聞くだろう、「銀行が倒産したら、どうなる?」と。
価値貯蔵スマート・カードを発行していた銀行の倒産はエストニアで一九九五年に実際にあり、九六年初めまで、自分の持つカードにお金が入っていると思っていた人々がそのお金を手にすることができるのかどうか、誰にも分からなかった。
手にすることは手にした。
政府が介入したのである。
私は、民営の預金保険を試すべき理由がここにすべてあると提案した。
価値貯蔵カードを発行する銀行が、倒産した銀行発行のカードの持ち主にお金を返す、基金を設立すればいい。
当初に必要となる金額はそれほど大きくないだろうから、こうした基金の正当性が裏付けられるし、ほかの預金機関はこの基金を利用できないように制限を設ければ、銀行は、自分たちの芝生にずかずか踏み込もうとする連中に対して市場で大きく優位に立つことができるというものだ。
米国には常にFRBがいる。
ワシントンに居を構える哲学者の王者、自分の周りにある市場の現実には、あのJ・プッシュと同様、無頓着だ。
九六年の三月、FRBは、レギユレーションEの修正案として、一〇〇ドル以下の価値貯蔵カードは取引の領収書や、毎月のカード所有者に対する報告を免除するとコメントを発表した。
発行者は、カードに期限があること(期限のあるものなら)と、カードをなくしてしまったら、もっとひどいことになることを、人々に伝えなければならなくなる。
忘れてならないのは、金額の安い価値貯蔵カードについて報告義務を免除するFRBの決定は、価値貯蔵カードが電話や交通システムを使う手段として普及したため、仕方なかった面がある、ということだ。
FRBが、銀行発行のスマート・カードについて一回の使用ごとに領収書の発行を求めたりしたら、銀行カードはそうしたこと(電話や交通手段)には使われなくなってしまっただろうから。
ところがFRBは、最初に少しだけ使える金額を書き込んだフリー・カードを銀行が消費者に送って、このシステムの普及を促すことを認め(要望もないのに勝手にクレジットカードを送ることは、かなり前から禁止されている)、また(興味深いことに)いくらでも金額の書き込みができるが、利用の記録は保管しないという、モンデックス流のシステムをすべて、レギユレーションEの対象から外したのである。
E社のデービッド・ボイルズはこれを辛らつに、しかも知的に批判して、次のように書いている。
「オンラインとオフラインを区別するFRBの提案は、消費者の利益を保護することとは、合理的な結び付きはない。
オンラインの価値貯蔵カードは。
すべての取引が承認され、記録されるから一番安全で、消費者は最大限に保護される。
つまり、盗難に遭ったカードは「抹消」されるし、ユーザーは自分が使った分をすべて後で知ることができる。
これと対照的にオフライン・カードは、その機能に格差があり、またカードを落としたり、盗まれたりした場合、お金を返してもらえなかったり、新しいカードに代えてもらうこともできないことが多い。
さらに、最近の技術の進歩で、同じ一枚のカードにオンラインの機能とオフラインの機能の両方を書き込む事が可能になった。
このような場合、技術が異なるからといって規制のレベルを変えるのは消費者を混乱させ、規制する側にとっても運用が難しく、また司法当局もどう解釈していいのか分からなくなる。
一部の個別規定は全く意味をなさない。
例えば、提案された規定によれば、オンライン取引には必ず領収書が必要だが、オフライン取引は同じ行動であっても領収書は必要ないという。
缶入りソーダを買っても、領収書が要ったり要らなかったりするわけだ」FRBが、この支払いシステムの革新を好意的に進めでいるなどと業界は幻想を抱いてはならな一九九五年一〇月、議会で証言したFRB副議長のアラン・ブラインダーは、発言をこう切り出した。
「価値貯蔵カード産業が拡大した場合、歳入の問題が生じる可能性がある。
近年の連邦政府は、通貨発行の差益でかなりの歳入を得ている。
その点の議論は、連邦政府自身が独自に電子マネーを発行すべきかどうかといった疑問を発生させる。
政府発行の電子マネーは、通貨発行益の減少の歯止めになり、消費者にとってもリスクのない電子的支払い手段を提供することになるだろう。
加えて、この産業も次第に独占に向かうとするならば。
政府もカードを提供することが適切な対策であろうと思われる」大衆に大きな利益をもたらす支払いシステムの改良が政府には多少の歳入減になりそうだから、議会は何らかの立法措置をすべきだというのは、ワシントンの外では、ひねくれた考えだと思われるだろう。
だがワシントンの中に入ると、それは十分正当な主張であるらしい。
チップ・カードが本当にこの先一〇年を賭けても良さそうなのは、インターネットを通じて買い物をし、電話やパソコンによって代金を払う際の安全性やプライバシーを保証する手段として便利だからだ。
スマート・カードは、暗号化の機能により(デジタル化した指紋や署名による検証の将来的な可能性は言うまでもないてユーザーの銀行口座やクレジットカードの番号が盗聴者に盗まれないように保証することができる。
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